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【キーワードで知るドイツ】 No.001:オスタルジー

ベルリンといえば?と聞かれると、やっぱり「壁」と答えてしまう。40年の間、壁を挟んで二つの国家が存在した稀有な運命をたどってきたドイツの首都。その面影は、いまの街の空気を形づくっているのかもしれません。
中世から都として栄えてきた歴史、冷戦期に建てられた画一的な団地や、壁の崩壊後に開発が進んだダイムラー・シティと呼ばれる現代的なエリア、世界からクリエーターが集まるミッテ地区。ベルリンには、街並みにも人々が織りなす空気にも、良い意味で均整にかけた、自由で個性的な表情があります。
その中でも特徴的なのが、「オスタルジー」という言葉です。ドイツ語で「東」をあらわす「オスト(Ost)」と「郷愁」をあらわす「ノスタルジー(Nostalgie)」が合わさった造語。イデオロギーや政治的なメッセージというよりも、「旧き佳き時代」への憧憬という意味で使われることが多いです。
ローザ・ルクセンブルク通りには、60年代に建てられたグレートーンのプラッテンバウ(プレハブ建築)、店先にはハイライトな白の光。通りを歩く人々は、「このコントラストがクールなんだ」と異口同音。レトロとモダン、過去と未来、最先端のプロダクトデザインにクラシックの土壌とパンクミュージックなどアンダーグラウンドのムーブメント。懐かしいのに新しいベルリンは、人の歩みと共に成長するエネルギッシュな街でもあります。