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【キーワードで知るドイツ】 No.004:ミュンヘンのビアガーデン

屋外で飲むビールは、格別な味。
オクトーバーフェストで有名なミュンヘンの街では、夏になると、テーブルとベンチが次々と外に運び出され、ビアガルテン(=ビアガーデン)がオープンします。
本日は、そんなビアガルテンのお話をいたします。
ビアガルテンの始まりは、春~夏にかけてのビール醸造禁止から。
ビアガルテン(=ビアガーデン)は、ミュンヘンの夏の風物詩。大きなマロニエの葉が木陰をつくり、木々におおわれたビアガルテンの空気は、ひんやりと心地よい。都会にいながら、深い森の中にいるような気分でくつろげます。
ビアガルテンの文化は、いっけん関係ないように見えますが、中世以来、春から夏にかけてビールを醸造するのが禁止されていた(空気が乾燥していて火災になりやすいため)ことに由来します。
醸造業者たちは、ビールを醸造してもよい9月末~4月の冬の間に大量にビールを作り、貯蔵する必要がありました。
当時は、冷蔵庫がない時代ですので、地中深くに蔵を作り、真冬の湖から切り出した氷を蔵に運び入れビールを貯蔵する方法が一般的。
しかし、ミュンヘンでは、地下水の水位が比較的高かったため、地中深くに蔵を作ることができず、貯蔵に十分な涼しさを確保するのが難しかったのです。
そこで、ミュンヘンの醸造業者たちが考えたのが、地下の蔵の真上に葉の大きなマロニエの木を植えること。マロニエの葉が日光を遮り、蔵の上層の温度が上がるのを防いだんですね。
そして、なるべく早く、たくさんのビールを売るには、蔵の上に酒場を開くのがよかろうという思いつきから、マロニエの木の下にテーブルとイスを並べ、樽出しのビールを飲ませるようになったのがビアガルデンの始まりなのだそう。
こうして始まったビアガルテン。ミュンヘンのビール醸造業者にとっては、快適なシステムだったのですが、ある業種の人たちからは、怒りの声が上がってきました…
ビアガルテンの開始に怒った人たちとは?
現代まで引き継がれるビアガルテンのルールとは?
ビアガルテンでは、食事を出してはいけない。
春から夏にかけて、ビールを貯蔵するのが難しかったことから始まったミュンヘンのビアガルテン(=ビアガーデン)。ビール醸造業者にとっては、快適なシステムだったのですが、ある業種の人たちからは怒りの声が上がります。
声を上げたのは、居酒屋の店主たち。
「醸造業者はビールを作るのが仕事であり、ビールと食べ物を提供するのは居酒屋の仕事だ」と、王様に訴えます。
そこで、王様は「ビアガルテンでビールを売っても良いが、食事を提供してはならない。食事は各々で持参せよ。」というお触れを出しました。
現代では、ビアガルデン内で食事も提供しており、普通のレストランと同じようになっていますが、どこかに必ず食事を持ち込んでも良い(食事を頼まなくても良い)テーブルが設置されています。
当時の伝統が現代でも受け継がれている一端がうかがえますね。
ちなみに、ビアガルテンとは、
■緑に囲まれていること
■食べ物の持込みが許可されていること
という定義が「ビアガルテン条例」(!?)の中に存在しています。
この不思議な条例は、ビアガルテンの営業時間が規制された際に「ビアガルテンの伝統を守ろう」と2万5000人ものミュンヘン市民がデモを行い、誕生したのだそう。
伝統とルールを重んじ、ビールを愛するドイツ人。
伝統を守るため!と同時に、本音はやっぱり「外で飲むビールはおいしい」に限るのかもしれませんね。